GABAN®

Da GOTO ダ ゴトウアイコン
東京都中央区日本橋室町 1-12-10 J1ビル 2F

広尾「LA ROSA DEL VIGNETO」を経て、2020年11月、日本橋に新店舗をオープン。にんにくや乳製品を控え、日本の旬の食材を柔軟に組み込んだ料理に定評がある。

後藤シェフが語る「イタリア料理とスパイスの関係」

  • GABAN®  ハーブミックス

    GABAN® ハーブミックス

    イタリア料理はハーブをとてもよく使いますが、多種を組み合わせるというより「シンプルにたくさん使う」というレシピが多いですね。トマトにバジルとか、肉にローズマリーとセイジなど、地域ごとの定番レシピが根強い人気です。
    僕にとって、スパイスは料理の「名脇役」。主張しすぎず、一皿の味を盛り上げてくれる存在です。今回使った「ハーブミックス」は、マジョラムがほんのり香って好みですね。4種類のハーブの個性がバランス良く、料理の印象をワンランク底上げしてくれるスパイスだと思います。

食材を料理に昇華させる醍醐味。旬の素材を愛でる一皿をお客様と一緒に楽しみたい

ひとつの素材がいくつもの料理になる、クリエイティブな世界に惹かれました

料理に出会ったのは学生時代、アルバイトをしていたお店でした。さまざまな食材に触れて料理を覚えていくうち、その面白さにどんどんのめりこんでいきましたね。例えば、じゃがいもがサラダになったりフライになったりスープになったりすることが、とてもクリエイティブな世界に思えたんです。正解がひとつではなく、料理人の腕やセンス、ホスピタリティによって何通りにでも広がっていく「レストラン」という空間を、いつか自分で作ってみたいと思うようになりました。
自分のことを更に振り返ると、もともとモノを作ることが好きでした。料理に限らず、ひとつの素材に手を加えていくことで新しい価値観を作り出す瞬間のワクワク感がたまらなかったんです。そういう意味では、レストランは食だけでなく、家具や食器、サービス、お客様とのコミュニケーションなど、空間そのものをプロデュースする必要があって、作り出すものだらけ。もちろん大変なことも多いけれど、自分にとってはクリエイティブ魂をくすぐる、非常に魅力的な仕事です。

イタリア料理の本質を探して

いろいろなジャンルがある中でもイタリア料理に惹かれたのは、南北に長く郷土色豊かな印象があったからです。また、おおらかで色気のある気質の人が多いのも、自分に合っているように感じました。特に、隣国と陸続きでフランスの影響が色濃いピエモンテや、歴史ある重厚な建築物や田園風景が美しいトスカーナは好きな地方ですし、馴染み深いですね。
イタリアでの修行は、今の自分の料理の方向性を決める土台になりました。特に「素材の持ち味を生かす料理」の基本を培ったように思います。現地で出会った料理人たちは、地元の食材と気候風土に寄り添った料理が本当に上手。どれもシンプルな味わいで日本の家庭料理に通じる優しさも感じられました。
スパイスやハーブの使い方も素直な印象です。例えば「羊にはミント」とか「サルシッチャにはフェンネル」「トマト料理には絶対バジル」といった、定番の組み合わせが好まれたり、親やおじいちゃん、おばあちゃんの世代から受け継がれたレシピを大切に守っていたり、コンサバな一面がありますね。イタリアで学んだスパイス使いは、自分が料理に向き合う時に常に立ち返る基本になっています。

日本の四季に寄り添うイタリア料理がおもしろい

帰国後は、日本だからできるイタリア料理の形を模索し続けました。日本はイタリアと同じく南北に長い土地であり、加えて四季ごとの食材が多彩。更に海のもの、山のもの、陸のものと、その豊富さは世界に類を見ないものがありますから、まずは日本の旬の食材を生かすことを第一に考えました。
国産の新鮮な食材は、それだけで食べても本当においしい。だから自分は、料理にほとんどにんにくや乳製品を使いません。手軽にインパクトの強い味が出せる一方で、主役の個性を消してしまう一面があるからです。
また、例えば「かぶのスープ」を作ろうと思った時に、鶏などの出汁を加えるとそれは「かぶと鶏のスープ」になってしまう。もちろんおいしいのですが、せっかくのかぶを味わいたいなら、動物性の出汁はないほうがいいかもしれない、というアプローチをします。食材を知るほど、シンプルな手法が理にかなっていると思うようになりました。一皿の料理を組み立てる時は、まず「メインの食材が主役になるための味付け」を考えると、迷いのない芯の通った味になると思っています。それが現在の「Da GOTO」のメニューにもつながっています。

コロナ禍は、自分のスタイルを見直す時間だった

新型コロナ感染症の影響は、もちろん自分にとって深刻なものでした。以前の店(広尾「LA ROSA DEL VIGNETO」)を閉めて、他店舗も経験し、次の展開を考えている間の出来事でしたから、飲食業界への先が見えない影響に不安にもなりましたし、新店のオープンに躊躇してしまうこともありましたね。そんな時に背中を押してくれたのが、よく通わせてもらっている友人の寿司店(三越前「蛇の市」)でした。ちょうど物件を探していた時に「うちの二階でやってみないか?」と声をかけてくれて。次は自分の目が届く規模のアットホームな店を、と考えていた自分にとってサイズ感がちょうどよく、何より日本橋の裏路地というロケーションにも惹かれて、開店を決意しました。
店づくりは、コロナ禍ということもあり焦らずじっくり取り組みました。メニュー構成や空間づくり、ワイン選びなど、今までの自分の経験を編集していく作業は、料理を始めた頃に魅了されたクリエイティブにあふれていて、とても充実していましたね。コロナのおかげと言うべきかどうかはわからないけど、時間は比較的あったので、ゆっくり考えられたことも今となっては良かったと思っています。
レストランは、店側だけで完結するものではなく、お客様と一緒に作り上げるもの。「Da GOTO」は日本橋という土地柄に寄り添い、アットホームでありながらちょっと特別感も楽しめる雰囲気づくりやサービスを心がけています。また、直接お話をしながらサービスができるよう、段差や目隠しのないオープンキッチンにしました。カウンター席のお客様は距離感が近いから、料理が出来上がる様子をライブでご覧頂けますよ。当日の食材をご案内しながら料理を仕上げるプレゼンテーションは、自分にとっても楽しい時間ですね。

好奇心と経験にあふれたシェフであり続けたい

コロナ禍の2020年11月に店をオープンしましたが、おかげさまで多くのお客様にご愛顧いただいています。コロナ禍における飲食業界の向かい風は厳しいものがあったし、これからもコロナ以前に戻ることはないかもしれません。でもだからこそ「質の良い外食」がこれまで以上に必要とされる時代になるだろうと前向きに考えています。
この業界は厳しいとか、きついというイメージがあるかもしれませんが、僕にとっては自分が楽しいと思うことや好きなことを実践できるとても刺激的な仕事ですね。もし、料理を仕事にしたいとか、独立したいとがんばっている若手がこれを見てくれているとしたら「料理は楽しいよ!」とシンプルに伝えたいです。
最後に、自分が料理の道を進む中で大事にしているのは「料理以外の経験」です。
レストランづくりのセンスは、料理をしているだけではちょっと足りない。特に盛り付けなどの美的センスは、料理の外にもヒントが多いと感じます。例えば山や海など、自然に触れる経験はとてもいいですね。食材は自然環境の中で育まれますから、その原点と言えるフィールドを楽しむことは、インスピレーションが生まれるきっかけになると思いますよ。
自然に限らず何にでも興味を持ち、人生の糧にしていけるような好奇心旺盛な人は、料理人としての素質があると思いますし、自分自身も、好奇心と経験にあふれたシェフであり続けたいと思っています。